2月 1日


《36 Quai des Orfèvres》
映画「あるいは裏切りという名の犬」を観てきた。原題の「36 Quai des Orfèvres(オルフェーヴル河岸36番地)」はパリ警視庁の住所、監督は元警官、実話を元に作られたフランス映画だそうだ。
はじめから心臓に悪いハードボイルドなシーンが続く。かつては親友だったレオ(ダニエル・オートゥイユ)とドニ(ジェラール・ドパルデュー)の確執、取り巻く警察官達の心理描写も、複雑な物語の絡み方なのだがよく出来ている。脚本が素晴らしいのだろう。レオを陥れた悪役のはずのドパルデューが魅力的に見えたりもした。久々に観た男くさい映画だった。
この作品のハリウッドリメイク版が決まっていて、レオとドニはロバート・デ・ニーロとジョージ・クルーニーが演じるそうだ。ダニエル・オートゥイユとロバート・デ・ニーロはすごく顔が似てるけど、どちらかというとレオ役がジョージ・クルーニーでドニがロバート・デ・ニーロというイメージだなぁ。
 2月 2日
暖冬だし、節分、立春と、気分は春に近づいているけれど、仕事から帰る時間はさすがに冷え込む。
自作の俳句を送ってくださるUさんから又季節の便りが届いた。雪吊りの松が出てくる句があって、数年前に仕事で訪れた金沢兼六園の冬景色を思い出す。「雪吊りに 夢見仕度や 岸の松」「雪吊りの 松に想いを 縄に込め」
他にも冬の冴えた月を詠んだ「夜も更けて 冬三日月の 白さ哉」等々数句。
そのお便りにこうあった。「高浜虚子が俳句は”存問(そもん)”であるといっています。つまり自然に対する”挨拶”をすることだそうす。『教育改革』に取り入れて欲しい言葉ですね。」
Uさんのおっしゃるとおり、教育改革に必要な部分、IQならぬEQに役立つ事だと思う。「存問」良い言葉に出会えた。
但し、五感を働かせて自然にご挨拶して・・・まではともかく、五七五をひねり出すとなると、あぁ難しい。
 2月 3日


《瀬戸田レモン》
今年もまたH子ちゃんが瀬戸田のレモンを届けてくれた。 眺めていると、高村光太郎の「レモン哀歌」が口をついて出てくる。 最近が物覚えが悪いのに、若い頃に覚えた詩は忘れていないものである。 

そんなにもあなたはレモンを待っていた  哀しく明るい死の床で
私の手からとったひとつのレモンを  あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ トパアズ色の香気が立つ・・・

瀬戸田がレモンの発祥の地だと知ったのは、故郷に向かってしまなみ海道を渡る時だった。 故郷を思い出して、ちょっと感傷的になっている 。
 2月 4日
昨日はヴォイストレーニングの先生の古希を祝う会に出席した。師匠は節分生まれの節子さん。
恵方巻きならぬ中華料理のコースをいただきながらのお祝いの席で、以下の心得(笑)をご紹介、喜んでいただきました~~(^^v

  還暦  60歳 これからが、人生おもしろい。
  古希  70歳 やりたいことが、やまほどある。
  喜寿  77歳 そう急ぐな、騒ぐな、慌てるな。
  傘寿  80歳 なんのまだ、世間の役に立つ。
  米寿  88歳 もう少し、お米を食べてから。
  卒寿  90歳 卒業するには、修行が足りぬ。
  白寿  99歳 百歳のお祝いが、済までは。
  茶寿 108歳 まだまだお茶が、飲み足りぬ。
  皇寿 111歳 あと一息、がんばれ日本一。

 2月 5日
昨日見た映画は、「筆子・その愛~天使のピアノ」という、知的障害児の教育に尽力した実在の人物、石井筆子の物語。 自らも障害児を生み最初の夫を若くして失うけれど、その後敬愛できる石井亮一と出会い「滝乃川学園」の運営に心血を注ぐという、並大抵では出来ない事をやりとおした強い女性の物語である。 山田火砂子監督にも障害を持ったお嬢さんがおられ、座敷牢のシーンに顔を見せている。 手弁当で作った映画、大変なご苦労だったと聞きでいる。 「滝乃川学園」への寄付に収益の一部が当てられるそうなので、もっとお客さんの入りが良いといいのだが・・・。
娯楽映画からシリアスなものまで、いろんな映画が好きだけど、暗くなりすぎず作られていてじんわりと感動した。ダウン症の子には悪意の感情がないから、天使に見える。彼らのくれる感動だけでも、彼らには生まれてきた価値があると思う。終って入ったトイレにはダウン症のお子さんとお母さん、どうも出演していた子のひとりとお友達のようで、「良い演技だとほめてあげよう」という会話をしているのが聞こえてきて、映画の延長のような微笑ましいシーンだった。

《筆子・その愛
~天使のピアノ》
 2月 7日
月火水と毎晩いろんな方がお出かけくださったライヴ、ありがたく嬉しい事!今夜は、故郷松山からの懐かしいお顔にも会えた。
ヴァレンタインディは別に女性から男性へのプレゼントだけじゃなくてもいいのよとおっしゃって、Mさんが大好物のシャンペン(モエ・エ・シャンドン)とチョコレートをくださった。
ここ数日、家に帰ってからのお酒を断っている。全く飲まないわけではなく仕事場でワインやビールは飲んでいるので、禁酒ではなく褒められた事でもないのだが、これで体重や体脂肪に良い結果が出て欲しいと思いつつ、我慢中。仕事が終ってから神経ほどけて飲むお酒の歓びはないのだが、代わりに体形が変化する快感に想いをはせつつ、我慢我慢~~(^^;;; 
美味しいものはカロリーが高いに決まってるのだ。Mさんに頂いた美味しいプレゼントは、オフの日の夕刻にのんびりといただくことにしよう。・・・あぁ、飲みたくなるから、もう寝ます。

《プレゼント》
 2月 8日
今、ユナイテッドシネマ豊洲で名作のアンコール上映をやっている。それも1本800円という嬉しいお値段なので、去年見逃した日本映画「ゆれる」と、ヴェネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞した「ブロークバック・マウンテン」の2本を観てきた。
「ゆれる」は、オダギリジョーと香川照之演じる兄弟の心のゆれ、行き違い、葛藤が素晴らしい作品。真実はどこにあるか、最後までドキドキ。
「ブロークバック・マウンテン」は、最初は友情で結ばれていた二人がホモセクシュアルの世界へと入ってしまうのだが、1963年のワイオミング州という保守的な舞台設定の中、特殊な関係なのに純愛という言葉を思い浮かべてしまった。
かたや兄弟、かたや男同士の恋愛なんだけど、たっぷりと良い男達を見た一日。どちらも見終わった時、優しい気持ちになれる作品だった。大満足!



《ゆれる》


 《ブロークバック・
マウンテン》
 2月 9日
荻窪で人形展を見てきた。谷岡さんというお客様の、15年前に亡くなられたご母堂芳枝さんの遺作展。
写真のものは、「鏡」と題された、覗き込む表情も可愛らしいもの。そして「道成寺鐘入」も、今にも蛇になりそうな気配。 他にも、戦う鎧武者、エジプトのもの、粋な平安美人等々、素晴らしい作品揃いである。乾漆といって、原型に麻布を漆で張り重ねて造り、そのあと原型をはずしてしまうので、思ったよりも軽いのだとか。
荻窪駅の傍だから、お近くにいらっしゃるようなら、是非お立ち寄りになってみては如何? ギャラリー歳時季(3391-9908)で28日まで。

《鏡》

《道成寺鐘入》

《題、忘れちゃった~》
 2月11日
感動!感動!!感動!!!82歳なんて、信じられない~~ 一気に休憩無しで歌い上げたシャルル・アズナヴール。なんて素晴らしい100分の20数曲だった事だろう。
16年前の最後かもしれないといわれたステージも、その前の数回も、聴きに行ってもちろん素晴らしいものだったのだが、歳を重ねて出てくる緩やかな風情、それも緩やかだけど決してゆるんでない音、一気に歌い上げる気迫、お洒落な目線は昔のまま、感動しすぎて、言葉に出来ないくらい。
涙がこぼれるエンディング、本当に、なんて素晴らしいんだろう!アズナヴールと同じ時代に生きてて良かった、そして、聴けてよかった。
 2月12日


《Je ne suis pas là pour être aimé 》
朝10時前の渋谷は、まだ開いてないお店もあって、いつもと違った顔をしていた。何故朝早くかというと、ユーロスペースで朝の1回しか上映していない「愛されるために、ここにいる(Je ne suis pas là pour être aimé )」を観るためである。
フランス版「Shall We Dance」かと思いきや、やはりそこはフランス映画、ぎこちなさやもどかしさ、感情の揺れの表現が素晴らしい。主人公の少々くたびれた男の設定、息子や父親との関係も上手く絡めてある。アルゼンチンタンゴ教室での出会いから始まった二人の想いが自然に胸にしみこんできた。オープニングにミロンガのリズムが流れてきた時から期待していたとおり音楽も良い。フランスでの公開後「小さな宝石」と話題になり、異例とも言える半年を越えるロングラン・ヒットとなったというのもわかる作品だった。
昨日今日と、フランス語を一杯聞けて幸せ~~ 今夜は恋をする夢みたいわぁ、それもフランス語で。
 2月14日
急に近眼が進んだ。 老眼ではない、近眼である。眼鏡屋のオジさんもそう言った。
それで、メガネを1年半ぶりに新調。 遠くはくっきりと美しく見えるけれど、本を読むにはクラクラする、はずさなきゃいけない。PCもメガネをはずした状態。・・・これって、老眼か~(^^
ともあれ、周りがはっきり見えて嬉しいこと!今まで見えてなかったものに気付かされるかも。散歩も楽しみである。
そのメガネをはずして、椰月美智子さんの本を2冊読み終えた。 字もありがたいことに大きめで、あっという間に読み終わり、幸せな気分になっている。 「十二歳」は、主人公の活発な小学6年の女の子が、 「しずかな日々」では、引っ込み思案の小学5年の男の子が主人公。 子供が成長していく過程の心の揺れが中心に描かれているのだけれど、単なる日常の積み重ねをこんな風に瑞々しく描けるなんて!
忘れてしまったあの時代を懐かしく思い出し、優しい気持ちになったまま、浅田次郎さんの短編に突入している。






 2月15日
昨夜仕事場で、まるで春一番のようだと話していたら、 本当に関東以西で「春一番」だったそうだ。 今日もきれいな青空が広がっている。
ヴォーカル教室でピアノを弾いてくださっている大切なお友達K子さんを、先日コミュニティmixiにお誘いしたのだが、そのページに彼女が写真を載せた。 なんてすてきな空と雲の写真なんだろう! 空に描かれたハート・・・ じぃっと見つめていたら、幸せになれそう。 (その写真をお借りしてしまった。幸せのおすそ分け~♪)
自然は絵のように、絵は自然そのものみたいに見える時が一番美しい、って言ったのは確かデカルトだったかな?
 2月18日

 《我が家に貼ってある
今回のポスター》
昨夜はお客様も出演者も、殆んどが先日のアズナヴールのコンサートに行った人ばかりだったので、アズナヴールの話題で盛り上がった。 行った日は9日、10日、11日とバラバラの日だったから、 やれ、この曲は歌ったとか、このパフォーマンスはなかったとか・・・再びアズナヴールを流しながらの、盛り上がった一日となった。
11日にご夫妻でご覧になったNさんは、バレンタインチョコの代わりに、奥様からアズナヴールサイン刺繍入りのハンカチ(\3000也)をプレゼントしてもらったとの事、 ほほえましいお話。
30年パリにお住まいのUさんからのメールでは、知り合いのANA支店長さんが「アズナヴールはANAを使ってくれたんだ」と嬉しそうだった、とのお話。(こんなネタまで嬉しい^^v)
「徹子の部屋」で、マッサージチェアを2台持っているが、来日したら更に何台か買いたいと話しておられたけど、秋葉原でアズナヴールを見かけた、なんて話は聞けないかしら!?
 2月21日
我が故郷の松山ロケーションなので懐かしいんじゃないか、と言ってK君が貸してくれたDVD「大暴れ風来坊」なかなかに面白かった。
ギターを抱えて歌うヒーロー役の小林旭、牧師崩れでズーズー弁というちょっと憎めないキャラの宍戸錠、怪しげな役がピッタリの藤村有弘、濃いキャラクター揃い。善玉悪玉もストーリーもハッキリしている。松山城や、石手寺、瀬戸内海等の景色もだが、途中に出てくる看板が、お菓子の「一六タルト」だったり農機具の「ヰセキ」だったり、「明屋(はるや)書店」が写ってたり・・・故郷を懐かしく思い出しつつ観終わった。
見たことのある役者さん皆な、若い事!浅丘ルリ子の何とまぁ愛くるしい事。白木マリのスタイルの良い事。そして「ズンドコ節」はじめ、凄いとしか良いようのない歌の数々(^^;;;
なんてったって1960年の作品だもんね。寅さんじゃないが、当時は人気シリーズだったんだろうな。あと数本くらいは観てみたい気もする。ちなみに英語題は「The Angry Rambler」ですって。イカしてる(笑)
 2月25日
以前この日記で、手作り名刺入れをプレゼントしてくださる長いお付き合いのお客様の事を書いた。その方は最近くださるお便りに、ご自分の名前の代わりに「有津廃馬」と書いてある。
「アルツハイマー」 ご本人は、84歳でも矍鑠としてて雑誌の原稿も手がけておられて、アルツは程遠い方。
私のほうがヤバイ・・・
昨日、図書館で借りてきた本を読み始めて、 「あれっ?前に読んだ、これ」
天童荒太さんの短編集だったのだけれど、題名を見てもまるっきり覚えてなかった。 こんな事もあろうかと残してある、読んだ本のデータを紐解くとなんと去年の8月に読んでいた。
借りた本だから忘れた、っていう問題じゃないよね。 自分で買った本で同じ本が、2冊ではなく3冊本棚に並ぶ事を想像してしまった。 危ないあぶない、気をつけなくては(^^;;;
 2月28日
昨日は横浜デュモンのライヴ、嬉しい素晴しい良い日だった。
ラマンダに預けてある私のCDを購入してくださったTさんが、その中のバルバラの「孤独」の訳詞をご覧になり、同級生だから嬉しくなったと、その訳詞者の冨野さんをお連れくださったのだ。冨野さんとは何度かお目にかかっていたが、ゆっくりお話させて頂いたのは初めてである。なおかつ話が進んでいったら、そのTさんの息子さんと甥っ子が同級生で、姉と共にTさんのお家に私もお邪魔し奥様と面識があった、という信じられないご縁。ステージも休憩時間のおしゃべりも盛り上がった事は言うまでもない。
ご常連のMさんは春先取りの取れたてふきのとうを持ってきてくださった。
俳句がご趣味のUさんからは前回の「冬の月」に続き「菜」をテーマの季節の6句を書いたお便りが届いた。
「春キャベツ 蒸してめざめを 知る甘さ 」ふきのとうを眺め俳句を読みつつ、あぁ、春はすぐそこに来ているんだと感じている。ちなみに番外編で書いてくださってたのは「飲兵衛も 菜に労(いたわ)られ 今日の酒」・・・よくお分かりだこと v(^^;



《ふきのとう》
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